ご挨拶
弊社は平成18年4月1日、株式会社宇佐美松鶴堂の京都国立博物館文化財修理部門を独立、設立させました。江戸は天明年間からの表具師としての流れと、昭和25年より京都国立博物館内にて続けてきた文化財修理という二つの流れをあえて文化財修理に注ぎ込む事といたしました。
近年の修理技術の進歩は、旧表具技術の踏襲のみでは克服しがたい科学的知識・技術・理念を必要とするに至っています。
従来の表具師は美的結果を絶対視していたように思いますが、これからの修理技術者はそのものが有しているあらゆる過去の情報、資料性を残しつつ、次の時代にも又修理が出来ることを第一に考えて行かねばなりません。文化財を美術、芸術活動の所産とのみ見るのではなく大きく人類の営みの中での文化資料とした場合、より多くの情報をその中に見出すことが出来るでしょうし、我々の未だ気付いていない資料もきっと含んでいる筈です。それらも含めて後に残していきながらおこなう修理とはどんなものかということを念頭において修理をしています。
科学的技術、理念をもって本紙修理を考える修理技術者が仕立ての技術に伝統を生かすことが出来るよう全員一丸となって研鑽に励みつつ文化財を未来に繋ぐ橋渡し役としてより公共性の強い修理にあたっていきたいと思っております。
株式会社松鶴堂 代表取締役 橋本 浩